「上の子が、可愛く思えない…」
これを口にするのは、とても勇気がいることです。
けれど実際には、たくさんのママが同じ気持ちを抱えていることをご存知ですか?
この状態は、「上の子可愛くない症候群」と呼ばれることもあります。
決して正式な病名ではありませんが、育児の中で多くのママがぶつかる悩みの一つです。
私自身も、上の子可愛くない症候群に悩みました
私にも、まさにこの言葉がぴったりな時期がありました。
上の子が1歳を過ぎた頃、私は第二子を妊娠しました。
つわりが重く、寝ても覚めても気持ち悪い。
それでも、まだ幼い上の子の食事を用意しなくてはいけない。
ご飯を作って、ぐちゃぐちゃにされながらも必死に食べさせて…
何度もこみあげてくる吐き気には、匂いも、その見た目も辛くて。

横になることすら苦しく、うずくまりながら寝かしつけに1時間以上。
夫は仕事でほとんど家にいない。
そんな日々が続くと、
「上の子と離れたい」「一人になりたい」
そう思うようになっていく自分がいました。
でも、それを誰かに打ち明けることなんてできなかったんです。
「母親失格」「子どもが可哀想」
そう思われるのが怖くて。
でもきっとこれは、妊娠中で体調が悪いから。
出産が終われば、この気持ちも落ちついていくと思っていました。
下の子が生まれて、さらに追い詰められた私
そして、ついに下の子が生まれました。
待望の赤ちゃん。とても可愛い存在です。
しかし、そんな赤ちゃんを守ることに必死な私は、
赤ちゃんの横で飛び跳ねたり、積み木を投げる上の子に
「うっとおしい」と
はっきりと感じるようになっていました。
上の子はまだ2歳。
私に甘えたい盛り。
甘えたい気持ちからの赤ちゃんへのちょっかいだというのは
頭の中では分かっている。
それでも、心からイライラしてしまうのです。
「危ないからやめて!」と強い口調で叱る自分。
優しく接したいのに、どうしてもできない。
赤ちゃんはよくミルクを飲んでくれるのに、
上の子は偏食で全然食べてくれない。
赤ちゃんが眠るわずかな時間。
「お願いだから静かにしていて…」
「あとちょっとで寝そうなの。10分でいいから静かにして」と思うのに、
上の子はお構いなしに騒ぎ出す。
逆もありました。
上の子の眠る時間。
この子は私が添い寝しないと眠れません。
だから、まだ眠る様子もない、
ご機嫌でおもちゃで遊ぶ下の子に
無理やりおしゃぶりを咥えさせる…。
そうしないと、上の子は寝てくれない。
「ごめんね、まだ遊んでたいよね。もう少しだけ我慢してね…」
赤ちゃんとの時間をもっと大事に過ごしたい。
本当は上の子にも、優しくしてあげたい。
それでも、毎日のように上の子に怒鳴っては、謝ることを繰り返し…
自分が自分でなくなっていくような感覚でした。

「ママ、僕のこと嫌いになったの?」
そんなある日、寝かしつけの際、
上の子がポツリと言ったんです。
「ママ、僕のこと嫌いになったの?」
その瞬間、ハッとしました。
それでも私は、「好きだよ」とすぐに言ってあげることができませんでした。
目をそらして、何も答えられなかったのです。
そう言わせてしまったことにショックを受けて
何も言えなくなってしまいました。
上の子は必死に私にしがみついて、
「僕、ママ好き!嫌いにならないで!」
と泣きそうな声で言いました。
たった2歳だった上の子を、私は追い詰めてしまった

今思い返せば、
あの頃の上の子はまだたった2歳。
赤ちゃんみたいに幼くて、かわいくて甘えん坊の小さな男の子でした。
ママに甘えたかっただけ。
もっと抱きしめて欲しかっただけ。
それなのに私は、下の子を守るために必死で、
上の子を突き放してしまった。
「好き」って伝えるどころか、心の中で何度も
「なんでこんなに手がかかるの?」
「なんでこんなにうるさいの」と思ってしまった。
「上の子可愛くない症候群」
誰にでも起こりうる、辛くて切ない、苦しい悩みなんです。
あれから3年以上が経ちました。
あれだけ冷たく接してしまった上の子。
今はお手伝いもしてくれて、
それでもママにくっついて、たまーに甘えん坊になったり…。
可愛くて仕方ない、大事な大事な息子です。
あなたは母親失格じゃない。限界だっただけ
こういうお話をすると、
「それは母親失格じゃない?」
「もっと上の子を大事にしてあげなきゃ」
と思う人もいるかもしれません。
でも、同じような状況で悩んでいるママさんへ
私は今ならはっきりと言えます。
これは、母親失格だからじゃありません。
ママ自身の心と体が、限界を超えていただけなんです。
ママだけで抱え込み、
守るものが多すぎて抱えきれなかったからこそ
起きてしまう症状なんです。
睡眠不足。
孤独感。
終わらない育児、家事。
赤ちゃんの世話と、上の子のフォロー。
あまりにも守るものが多すぎて、
自分を支える余力なんて残っていなかった。
だから、心の中で大事な上の子を
「可愛くない」と錯覚してしまうんです。

少しずつ変わっていった私の気持ち
そんな上の子も、今では5歳になりました。
自分でお手伝いをしてくれるようになり、
いつも元気いっぱいな、まだまだかわいい盛りの息子です。
2歳の頃の写真を見ると、
「なんであの時、もっと抱きしめてあげられなかったんだろう」
と涙が出そうになります。
あの時に戻って、「本当は大好きなんだよ」って
まだ幼い身体を抱きしめたい。

あの時の「僕のこと、嫌いになったの?」という言葉は、
今でも心に突き刺さったままです。
この先も自戒を込めて、そして同じように苦しんでいるママさんへ
声をかけていけるよう、敢えて忘れない。
私は、胸に一生刻み続けることを選択しました。
「上の子可愛くない」と感じるママへ伝えたいこと
もし、今この文章を読んでいるあなたが、
「上の子が可愛く思えない」
「下の子ばかり可愛がってしまう」
と悩んでいたら――
大丈夫。
あなたは悪くありません。
頑張りすぎて、
心と体が限界を超えてしまっているんです。
だから、どうか自分を責めないでください。
「可愛くない」なんて思う自分を、責めないで。
そんなママの心に、私のリトミックがそっと寄り添えたら…
そう思って教室を開いています。
あの頃の私はきっと
「あなたは頑張りすぎているんだよ」
「責めないでいいんだよ」
そう誰かに言ってほしかった。
今ならその言葉を
同じように悩み、悲しんでいるママさんに
私が届けられるような気がしています。
さいごに
子育ては、喜びや愛しさだけじゃなく、
イライラや孤独、不安や自己嫌悪に襲われることも多いです。
それは決して、あなたが母親失格だからじゃありません。
「上の子可愛くない症候群」は、
頑張るママほど陥りやすいもの。
どうかあなたも、
自分を大切にしてあげてください。
そしてもしよかったら、
私のリトミック教室に遊びに来てくださいね。
ママとお子さんの心がふわっと軽くなる時間を、
ここで一緒につくれたらと考えながら
毎回レッスンをしています。

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